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俺がこの文月学園に入学してから二度目の春がやってきた。
校舎へと続く道には綺麗な桜が咲き誇っている。
校門の前へと辿り着けば、生徒の間で“鉄人”と呼ばれる教員とバカっぽい生徒が話をしていた。
バカっぽい生徒にも見覚えがあるため、驚かそうと思いゆっくりと近づく。
バカっぽい生徒が折り畳まれた紙を開く。
何が書いてあるんだ?
「お前はバカだ」
鉄人!?
お前が容赦無い奴だとは知っていたが、そんなズバッと言うなよ。
確かにこいつはバカだと俺も思うけどよ。
「ん? お前も遅刻か、椎木」
げ、バレた。
微かにショックを受けているバカっぽい生徒をよそに鉄人が俺に話し掛ける。
「すいません。来る途中でおばあさんの荷物を持ってあげまして……」
「嘘をつくな、嘘を」
鉄人は右手に持っていた封筒でポンポンと俺の頭を叩く。受け取れ、と言って鉄人が差し出して来た封筒を受け取る。
宛て名の欄には『椎木空斗』と、大きく俺の名前が書いてある。
「ありがとうございます」
一応は鉄人にお礼を言いながら封筒を開ける。
中を覗くと、そこには一枚の紙が入っていた。さっきこの生徒が見ていたのはこの紙だろうか。
あ、言い忘れてたけど……このバカっぽい生徒の名前は吉井明久。俺の悪友とも言える友達だ。
中に入っていた折り畳まれた紙を開き、書かれている文字を確認する。
『椎木空斗……Fクラス』
「あれ、空斗もFクラスなの?」
不思議そうな顔をして俺の持っている紙を覗き込む明久。鉄人までもが明久に同意するように頷く。
「お前の力ならAクラスにだってなれただろうに」
「そーそー。空斗って結構頭良いんだしさ」
二人共が怪訝そうな顔で俺のことを見つめる。分かってないな、と呟きながら俺は肩を竦める。
「Fクラスの方が楽しそうじゃねぇか」
ニヤリと笑って言い放てば、明久は「空斗らしいや」と言って微笑んだ。
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