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自動ドアをくぐり、正面に見える階段を登った。踊り場で折り返し、二階についたがまた階段を登った。三階にその子がいるらしい
「ヴァイス君は、306号室です」
女性がそういって、通路の方向を指指した
「まるでホテルだな」
私は感心して言った
「個室とは…豪華ですね」
「いいえ、ホテルなんかじゃありません」
女性は階段を降りながら、微笑んだ
「モデルは刑務所です」
私は気を取り直し、306号室に向かった。隣の扉との感覚を見る限り、そこそこな広さはあるようだ。306と書かれたプレートの下あたりを、私は二回叩いた
「………開いてる」
ぶっきらぼうな答えが扉の向こう側から聞こえて来た。私は扉のノブを回し、中に入った
壁は木材のように見せかけている。床は本当に絨毯のようだ。チェックの赤と黒だった。入って右の仕切られたスペースに小さなベッドがあり、彼はそこに腰掛けて読書をしていた
私は扉を閉めた
「…私はマリウスという。君の審査に来た」
彼はそれを聞き、初めて本から顔を上げた
「あれ……孤児院の人じゃ無いのか…」
読んでいた本にしおりを挟み、ヴァイスという少年は近くに背もたれの無い椅子を置いた
「どうぞ、ベッドに座って」
自分はその小さな丸椅子に乗り、私は彼に促されるままベッドに腰かけた
「あの…審査って?」
「君は、この孤児院に大人になるまでいたいか?」
少年はいきなりの質問に少し驚いたような表情をしたが、すぐに首を横に振った
「ここは嫌だ。大人は嘘をつくし、子供は皆ひねくれてる」
「そうか?報告を見た限り、君がひねくれ者のようだったが…」
「それじゃあ、僕がひねくれてて皆は普通なんだよ」
少し間を置いた
「だって、ここじゃ皆がひねくれてるから」
その少年は何の違和感も無く、涼しい顔でそれを言った
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