―SWEET SILENCE―

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  「先輩、もう教えてあげた方がいいんじゃないですか?」 一緒に参加する同期の大原香織が、着替え終わって左隣から口を挟んで来た。 香織は私より10センチも背が高く、いわゆるボンキュッボンで小顔の上に目も大きくてズルイ。 「そうですよぅ、見て見てこの爪!!」 さらに右隣から同じく同期の赤沼サエが、私の右手を持ち上げると先輩の前に持って行った。 「ちょっとサエ!!」 サエは少し色黒のぽっちゃり系だが、表情豊かでとにかく明るい。 並外れた行動力で、同期の中では情報屋と呼ばれるほど社内の情報に詳しい。 「綺子ちゃん……もう夏よ? 暑い暑い、夏なのよ?」 「いいじゃないですか!!」 サエに掴まれた手を戻して、とりあえずロッカーを閉めることにした。 先輩に背中を向け、閉める前にもう一度鏡でチェック。 前髪よ~し、メイクよし!! 「夏だからって涼しげな色を選ぶ必要はないんです!!」 私が力いっぱい断言した後に、サエが一緒に鏡を覗きこんで来た。 「今夏の流行りは、マットな質感の水色や白だよぉ」 「あくまでもそれは一般的な好み。大人の男性のインスピレーションをくすぐる、エッチな赤が私のこだわりなの!!」 これでもか、とサエの鼻先に赤い爪を突きつけてやった。    
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