(2)運命のステアリング

7/8
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
足回りやブレーキ系こそ純正のままだが、この車の装備ではなく雰囲気にユウスケは惹かれた。 (ギャラン…お前と走ってみたいな…)ユウスケは心の中でギャランに語りかけていた。 他にも何台か気になる車はあったが、ギャランはユウスケの心を捕らえて放さなかった。 気付けば親父がその店の店員と何やら話込んでいる。 手元には書類が見える。 ユウスケの視線に気付いた親父がユウスケを手招きし、隣りにきたユウスケに告げた。 「ユウスケ、この車でいいんだな?」 「はっ…えっ…?たしかに、すごく欲しい車だよ。」 突然の質問にユウスケは戸惑う。話がまったく理解できない…。 「じゃあ決まりだ。ギャラン買うぞ」 「…。マジで…?」 「おう、本当だ」 「でも、そんな唐突な…」 「嬉しくないのか?」 親父はニヤリと笑った。 ユウスケは自分のおかれた状況をようやく理解した。 ギャランが…おれの車…? この一言を噛み締めた瞬間、ユウスケは心の底から込み上げるような喜びに、武者震いを感じた。 細かな書類整理を済ませ店を後にする。 ユウスケは店を出る時にギャランの方をもう一度しっかり見た。 (よろしく頼む。相棒) 親父に気付かれないよう、ギャランに向かって硬く拳を握り締めるユウスケであった。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!