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足回りやブレーキ系こそ純正のままだが、この車の装備ではなく雰囲気にユウスケは惹かれた。
(ギャラン…お前と走ってみたいな…)ユウスケは心の中でギャランに語りかけていた。
他にも何台か気になる車はあったが、ギャランはユウスケの心を捕らえて放さなかった。
気付けば親父がその店の店員と何やら話込んでいる。
手元には書類が見える。
ユウスケの視線に気付いた親父がユウスケを手招きし、隣りにきたユウスケに告げた。
「ユウスケ、この車でいいんだな?」
「はっ…えっ…?たしかに、すごく欲しい車だよ。」
突然の質問にユウスケは戸惑う。話がまったく理解できない…。
「じゃあ決まりだ。ギャラン買うぞ」
「…。マジで…?」
「おう、本当だ」
「でも、そんな唐突な…」
「嬉しくないのか?」
親父はニヤリと笑った。
ユウスケは自分のおかれた状況をようやく理解した。
ギャランが…おれの車…?
この一言を噛み締めた瞬間、ユウスケは心の底から込み上げるような喜びに、武者震いを感じた。
細かな書類整理を済ませ店を後にする。
ユウスケは店を出る時にギャランの方をもう一度しっかり見た。
(よろしく頼む。相棒)
親父に気付かれないよう、ギャランに向かって硬く拳を握り締めるユウスケであった。
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