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走り屋のチームに在籍しながら走り屋ではない…この大きすぎる矛盾の理由はユウスケの価値観にあった。
車には車の種類とドライバーの数だけ無限の価値観が存在する。
その中でも車のポテンシャルを限界まで引き出すことに楽しみを見出すのが走り屋やレーサーというだけの話で、それだけが車の全てではない。
車を通じて体験する様々な刺激や感動、知識を得ることの喜びこそがユウスケにとっての価値観であった。
その刺激の中には山を攻めることも含まれてはいるが、それが周りの走り屋達と比べると小さいのであった。
なので、ユウスケは神王山を走る際も絶対にセンターラインは割らない。相棒のギャランも足回りとブレーキ、ボディ剛性の強化とライトチューンに徹していた。
見た目はユウスケのこだわりでそっくり純正のままである。
ユウスケのような人間は走り屋としては中途半端な立場だ。
チームによっては受け入れられないかもしれない。
しかし、このチームにユウスケが受け入れられているのは年齢を気にしせず仲間として対等に接する姿勢と人当たりのいいユウスケの性格のおかげであった。
「まぁ…そう言うと思ってたけど…。にしても、相変わらずユウスケさんのギャランはピカピカで走り屋らしくないっすよねぇ…そんなに好きなんですか?ギャランが」
タカが皮肉混じりに言った。
「だから、おれは走り屋じゃないってば…おれが走り屋やらない理由にギャランを傷つけたくないってのもあるかなぁ。大好きだね。ギャランが」
そう言うユウスケは目を輝かせていた。
「ユウスケさんはどんなキッカケで車が好きになったんですか?」
タカがユウスケに興味深そうに聞いた。
「ん…?ん~…どうって言われても…ちと長い話になるけど付き合ってくれる?」
ユウスケはタカに断りを入れて、自分の過去を話始めた。
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