(2)運命のステアリング

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二人が付き合い始めて1年の記念日の前日… ユウスケが寝ているとケータイが鳴った。 着信の相手は夏美だ。 ユウスケは理屈ではなく嫌な胸騒ぎに襲われた。 「もしもし?」 ユウスケが出るが夏美は何も言わず黙ったままだ。 時間が止まったように、重苦しい空気だけが電話越しに二人を包んだ。 「別れたいの…?」 たまらずユウスケは切り出した。 「うん…ごめん…」 消えそうな声で夏美は答えた。 グサリと刺さる一言だった。 しかし、ユウスケは平静を装って 「明日いつもの場所でゆっくり話そう」 それだけ伝えるのが精一杯であった。 いつもの場所…ユウスケと夏美がお気に入りの場所だ。 眺めのいい海岸で、ワゴンRのような小さな車でなくては出入りできない場所だった。 眠れないまま、翌朝を迎えユウスケはワゴンRに乗り込む。 いつもならワクワクする瞬間だが、この日はただ気が重いだけだった。 夏美との待ち合わせ場所…いつもより待つ時間が長く感じた。 姿を見た夏美は今まで見たこともないような派手な格好に派手な化粧をしていた。 それだけで、夏美がすでに遠い存在になってしまったようで、ユウスケにとっては大きなショックであった。 「もうユウスケに興味がなくなったの…それに私浮気してた…もう好きじゃないから別れて…」 いつもの場所、いつもの車内…空気だけが凍り付いていた。 冷静に言う夏美の一言にユウスケは 「よりを戻そう」 の一言を飲み込むしかなかった。 これから友達と遊ぶという夏美を送り、ユウスケは一人ワゴンRを走らせた。 二人だった車内に一人…。 二人だったシフトワークが…一人…。 泣いた…ユウスケは泣きに泣いた。 家に戻ったユウスケはやり掛けのゲームに熱中することしか生き甲斐はなくなっていた…。 一人で運転するワゴンRなど乗りたくもなかった…。 ユウスケは車を嫌いになり始めていた…。
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