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その後の言葉を、多分アタシは一生忘れない。
「彼女持ちってか、彼氏持ち?」
まっすぐと、弱々しいながらもアタシと目を合わせる。これは、軽蔑してはいけない。決して軽んじてはいけない、真摯な覚悟だと思った。
「うん。ごめん。自分、榊が好きだよ。ごめんね?」
最後の「ごめんね」は、目を逸らしながら。アタシから、目を背けながら。
頭が、混乱する。だって、だって。だって、加藤はオンナノコだよ?アタシはオンナノコだよ?
軽蔑する暇も、気持ち悪がる暇もなかった。それくらい、動揺していた。むしろ、気持ち悪いだなんて、微塵も思わなかった。
キーンコーンカーンコーン
タイミングの悪いチャイム。この学校、ノーチャイム制なのに。朝の予鈴と昼休みと掃除のチャイムだけ、鳴る。
「じゃ」
加藤は華麗に走り去って行った。
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