001

2/4
前へ
/35ページ
次へ
―――が。 なんで―――なかったの。 「先生。」 その声が隣から聞こえる。 誰だ、せっかく寝ていたのに。 「久瀬先生ってば。」 聞こえてるよ。 そんな言い方しないでくれよ。 渋々顔を上げて声のする方に返事をする。 「おはよう。」 そんな場違いな一言を言った。 場違いと言うか時間違いだよな。 今お昼だし。 「先生、こんなところで何してるんですか?」 目が覚めてきてようやく生徒だとわかった。 あとスルーされたな。 厳しい世の中だ。 何してるって…。 そこまでの理由はないんだけどね。 「ひなたぼっこ。」 「先生ここに居ること多いじゃないですか。」 これもスルー。 久々だなぁ…こんな寂しい気分。 「ここで待ってるんだよ。いつ来るのかわからないけど。」 「待ってるって、人を?」 人…か。 人と言えば人だよな。 どこから見ても人にしか見えないだろう。 だけど中身は違う。 「あぁ…うん。」 とても曖昧な返事になってしまったけど仕方がない。 人として判断していいのか自分には分からない。 「ふ~ん。」 何だか納得してないみたいだ。 まぁ納得しないとは思っていたけど。 「変な先生。」 そう言い残して生徒は校舎へ足を運んでいった。 若干クスクスと笑いながら。 先ほど生徒が言っていた「ここ」とは学校の中庭である。 噴水付近のベンチに腰を掛けている。 馴染み深い場所。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加