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―――が。 なんで―――なかったの。 「先生。」 その声が隣から聞こえる。 誰だ、せっかく寝ていたのに。 「久瀬先生ってば。」 聞こえてるよ。 そんな言い方しないでくれよ。 渋々顔を上げて声のする方に返事をする。 「おはよう。」 そんな場違いな一言を言った。 場違いと言うか時間違いだよな。 今お昼だし。 「先生、こんなところで何してるんですか?」 目が覚めてきてようやく生徒だとわかった。 あとスルーされたな。 厳しい世の中だ。 何してるって…。 そこまでの理由はないんだけどね。 「ひなたぼっこ。」 「先生ここに居ること多いじゃないですか。」 これもスルー。 久々だなぁ…こんな寂しい気分。 「ここで待ってるんだよ。いつ来るのかわからないけど。」 「待ってるって、人を?」 人…か。 人と言えば人だよな。 どこから見ても人にしか見えないだろう。 だけど中身は違う。 「あぁ…うん。」 とても曖昧な返事になってしまったけど仕方がない。 人として判断していいのか自分には分からない。 「ふ~ん。」 何だか納得してないみたいだ。 まぁ納得しないとは思っていたけど。 「変な先生。」 そう言い残して生徒は校舎へ足を運んでいった。 若干クスクスと笑いながら。 先ほど生徒が言っていた「ここ」とは学校の中庭である。 噴水付近のベンチに腰を掛けている。 馴染み深い場所。
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