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「ああ、教えてくれるかい?」
「私は4月に生まれたの。その頃桜が満開だったの。その桜が快晴の青い空に吸い込まれるくらい美しかったそうよ。私はそういう美しい晴れの日に生まれてきたの。」
「だから美晴なんだね。」
「そうよ。だから私はきっと晴れ女なのよ。」
僕は美晴を見つめて言った。
「美晴らしいよ。きっと僕は君に出会うべくして出会ったんだね。美晴のおかげ雨男からも抜け出せそうだよ。」
「それはプロポーズかしら?面と向かってそう言われると照れるじゃない。」
「あ、いや、そんなつもりじゃなかったんだけど。」
「本当に?」
「本当さ。」
「なんだ…。ちょっとどきっとしちゃったのにな。でも私、雨って好きよ。森の中で降り出した雨なんて幻想的だし、神秘的じゃない。」
「ああ、そうだね。」
僕はそっけなく返してしまったが、気が気ではなかった。美晴のどきっとしたという言葉に動揺の色を隠せずにいた。
僕達はそこから無言になってしまい、昼食を食べ終え、救護室にもどった。
美晴の言葉を受けた僕は、運動会が終わる間美晴の姿を見ることが出来なかった。
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