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運動会も終わり、後片付けを始めた。
僕と美晴は持って来た救護道具を運びだしていた。
何だか気まずくてどちらからも言葉が発せられることはなかった。
そんな沈黙を僕は破る術を持ってはいなかった。
最初に口を開いたのは美晴だった。
「ねぇ…。どうして話しかけてくれないの?」
「美晴こそ。」
「さっきの話で気まずいと思ってるなら謝るわ。」
「謝られても困るな。」
「じゃあ、忘れて。」
「忘れれるわけないだろう。すごく嬉しかった。ただ僕は過去にこんな経験が全くないんだ。少し戸惑ってる。」
「私だって、こういうこと言ったのは初めてよ。だからあなたの気持ちを考えずに言ってしまったの。いいえ、あなたに伝えなきゃ気がすまなかったの。」
僕は美晴の目を見つめた。美晴も僕の目を見つめ返してきた。
また僕は黙ってしまった。美晴も視線を足元に落とし黙った。
「ありがとう、うれしいよ。僕も美晴のことが好きだ。好きで好きでたまらない。でも、今は自分自身にも美晴に対しても正直にはなれないんだ。どうしても、恐怖がついてまわってくる。僕はどうしようもないやつだね。」そういって僕は作り笑いを見せた。
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