現在地

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そんなとりとめのない会話を済まし、僕は自分のデスクに向かった。 僕はここに就職してから7年が過ぎていた。仕事も順調にこなし、上司からはあとは結婚するだけだな、などと冷やかされるようにもなった。 高校時代から比べると少しは社交的になれていたのかもしれない。 そして、上司はこう続けた。 「おまえ、どうやら受付の結子ちゃんと仲がいいらしいじゃないか?いい子じゃないか。是非、結婚式にはスピーチさせてくれよ。もうすぐジューンブライトだからなぁ。」 と皮肉まじりに言いはなった。 僕は特別気にするわけでもなく、そうですね。と返した。 もう6月だ。今まで仕事に追われ、季節の感覚なんて考えていなかった。 もう梅雨だ。梅雨になると思い出す。僕の心の中に鍵をかけていた記憶が溢れてくる。 僕と彼女だけの甘酸っぱい記憶が…。
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