受験

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寒い冬だった。 外には雪が舞い、道には参考書を睨みつける学生が列をなしている。 学生達は館内に吸い込まれていった。 教室に、少しずつ学生の姿が増えていく。 気がつくと外の雪が止んでいた。 席は埋まっていた。 多少の穴はあるものの、大方揃ったと見てよさそうだ。 私が見回す限り、やはり同じ顔でいっぱいになっている。 その中に1人、眠っているかのように目を閉じている青年がいた。 私はなぜだか惹かれた。 しばらく彼を見つめていた。 その間にも時間は進んでいた。 私の一言から、学生達の将来を決める戦いが始まる。 彼はまだ目を閉じていた。 「----はじめ」 一斉に学生達がペンを取る。 彼の目が開いた。 全身に鳥肌が立った。 -----寒い冬だった。
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