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『やぁ、何だか楽しそうだね』
いつも通りカウンターに集まって他愛もない話をしていた俺達に、男はこれ以上ないくらいの笑顔を見せ、近付いてきた。
雨を吸った濃紺のスーツが線の細い身体を一層際立たせ、人当たりの良さそうな静かな口調が心地良くフロアに響く。
男の人懐こさに驚くも、濡れねずみと化している姿を見るなり、ロイはすぐさま表を閉め、二階に連れて行く。
「ロイも大変だな。昼から店開けてるせいだぜ、きっと」
フェイは煙草を吹かしながら、ぼんやりと呟く。
「昔から面倒見が良いから、ロイは」
しばらくすると、階段が軋む音がした。
『済みませんでした、ロイさん。シャワーに着替えまで…』
「別に構わないさ。それにしても災難だったな」
談笑しながら降りてきた男は、ロイに促され俺の横に座る。
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