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イタリア・ローマ。
国の首都であるこの街は、今日がクリスマスであるということも関係しているのか、夜中だと言うのに昼並みに明るい。
だが、そんな日でも“闇”は存在する。
首都・ローマの人気のない街角にある小さな宿屋に、十二歳の少年・進藤討魔はいた。
「…………チッ」
討魔は宿屋の壁に背中を預けて右肩から流れる血を見る。
外態型の悪魔憑きを捕らえる為にローマへ来たが、準備不足と悪魔の侵食を抑制する薬を飲み忘れたという、何とも彼らしくない理由で深手を負わされたのだ。
(……今の状態で悪魔化するのは避けるべきか)
悪魔化すれば傷はすぐに癒える。だが抑制剤を飲まず、立て続けに悪魔化したら自分が悪魔になってしまう為、傷を癒すことが出来ない。
(血は……止まらないか)
肩、肘、掌へと激しく流れる血を見ながら、討魔は死が近付いてくるのを感じた。
………そんな時だった。
「君、大丈夫?」
死ぬ寸前の討魔の前に、心配そうな顔で彼に問いかける、長い髪の少女が現れたのは。
「酷い怪我………手当てするから中に入って」
少女に肩を貸され、討魔は宿の中へ入った。
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