一話『ナオトとハルナの神探し』

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  「号外! 号外! 恒例の廃屋神フィオナの目撃情報だよ!」  新聞研究部が今日も慌しく廊下を駆け抜け、号外のビラを通行人に無理矢理押し付けて行く。ばら撒くよりはまだマシだと思うが、この 力士のツッパリ並の強引さはどうかとうかがいたい。  そうして私が背もたれにもたれながら廊下を眺める中、同じクラスの男子がわざわざ号外を受け取りに、廊下へ駆け出した。そんなことをしなくても後々掲示板に貼り出されるビラを見ればいいのに。  私はそう思うものの、今この学校は“フィオナ”が全てを握っているのだ 。フィオナのネタには学園の誰しもが飛びついて行く。だからこれまでずっと、この戸田丘中学の発行している生徒新聞はフィオナのネタ で埋め尽くされている。  そう、今この学校は創立以来、ずっとずっと、フィオナブームなのだ。  先程駆け出した男子が満面の笑みで私達の元へ戻ってくる。私がいそいそと瀬を正す中、男子は息を切らしながら、真新しいインクの香 りのするビラを私達6人に差し出した。  すると、すぐさま窓際の私達の元に、クラスの皆がまるで押し競饅頭でもするかのようにせり集まってきた。クラス全員の目を釘付けにする、フィオナの存在はそれ程の威力があるのだ。
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