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もはやため息をつくしかない俺を尻目に旭は艶やかに笑うと、きた時同様一瞬のうちに転移していた。
「さて……こちらもはじめましょうか。」
そう言って俺は切り替えるようにロードから採取した『強固な角』を亀裂の中にほうり込み、ゆっくりとハルバートに魔力を注ぎ込んだ。
「向こうはパワー勝負ですから、こちらはスピード勝負といきますかね。」
一人思案するように囁き、ハルバートを通して地面に魔力で魔法陣を描く。
それと同時に、久しぶりに紡ぐ言葉を口にした。
「ここに舞うは神の息吹。
山を越え、海を越え、大地を走り、ここに目覚めよ―――《神獣・シルビア》!」
俺が朗々と唱えた瞬間、足元に描かれた魔法陣から竜巻のような風が立ち上る。
その勢いは凄まじく、魔法陣をくり抜くように地面が割れた。
しかし地面はそのまま陥没することはなく、強い風が俺と共に地面を空高く突き上げる。
そんな中俺はハルバートを肩に担いでそのまま風に身を任せていると、まるで抱き込むように一陣の強い風が吹いた。
いや、これは風ではない。
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