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「そういえば、先程から少し気になっていたのですが……」
「あまり時間ないから、手短にお願い。」
その言葉に、まりえは目を向けることなく先を促した。
言葉の通り時間がないのか、まりえの歩くスピードはいつもより速い。
それにちらりと見た横顔が、微妙に引き攣っている。
しかし馬鹿みたいにでかい学校ということもあり、下駄箱までがとにかく長いのだ。
周りには噴水やベンチなどがあってひなたぼっこでもしたらさぞや気持ちよさそうだが、なにぶんずんずん歩いていくお嬢様に引きずられているので、その景色を堪能する暇もない。
こんな時にこんなことを聞くのも何だが、俺は聞かずにはいられなかった。
覚悟をきめ、口を開く。
「私は、一体どこに連れて行かれるのでしょう……?」
「わかっていなかったの?」
あまりに見当違いの質問だったのか、お嬢様はつい足を止めて俺を見てしまった。
その顔は少々間抜けだが、あえて何も言わないでおこう。
「すいません……」
凝視してくるお嬢様の視線に決まり悪そうに、そして申し訳なさそうに頭を下げた。
だが先程まで自分が学校にくることになるとは思ってもなかったのだから、この状態は当たり前といえば当たり前である。
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