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「きましたね。」
そう言って落下する自分を受けとめた先程の風―――神獣を見ると、俺は柔らかい笑みを零した。
白銀に輝く綺麗な毛並み。
見上げるほど大きな体躯。
深い森を表すかのような深緑の瞳。
落下する俺を難無く背中で受け止めたのは、神々しい威圧感を放つ狼だった。
神獣はそのまま軽やかに地面に着地し、甘えるようにこちらに視線を向けてくる。
『久しぶりの外……』
「すいません、シルビア。
最近、全然呼んでいませんでしたから……」
どこか拗ねたような口調の神獣―――シルビアの喉元を撫でてやり、俺はゆっくりと視線を剛鬼たちに戻した。
「本当は、このままじゃれていたいですけど……残念ながら仕事です。」
その言葉にシルビアは唸り声を上げ、射るような視線を剛鬼に向ける。
とりあえず俺もシルビアから降り、地面に足をつけた。
『あまり気乗りしない。
こいつらは、そこまで旨くはないから……』
「食べちゃ駄目ですよ。
調べたいこともありますし、多分送ってあげなきゃいけなくなると思いますから。」
今にも食いつきそうなシルビアをなだめるように首に抱き着き、そのまま探るように剛鬼を見る。
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