いきなりの編入生

3/12
8316人が本棚に入れています
本棚に追加
/990ページ
所変わって、ここは学園の廊下。 西洋のお城のような外観に負けぬその立派な廊下は、とにかく長い。 人がゆうに5~6人は並べるほど広く、床は綺麗にワックスがかかって輝いている。 しかしすでに朝のホームルームが始まっていることもあり、廊下には誰一人としていなかった。 静かな廊下は、ただ窓から入ってくる光りに照らされているだけ。 何とも平和な一時である。 しかしその静寂を打ち破るような、けたたましい声が響いてきた。 「ちぃいこぉおくぅうっ!」 ドドドドドド――― 一体どこから声を出しているのだろうか。 一瞬そう思ってしまうくらい、その声は切羽つまった低い声だった。 そしてその声と連動する、地鳴りのような足音。 この状況からして教室まで走って行っていることはわかるが、その顔は阿修羅のごとく。 いやそれ以前に、その走る姿は一陣の風のようである。 もちろん誰もいない廊下で目撃者もとい邪魔者がいるはずもなく、教室まで鬼のような速さで走っていったのだった。 .
/990ページ

最初のコメントを投稿しよう!