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所変わって、ここは学園の廊下。
西洋のお城のような外観に負けぬその立派な廊下は、とにかく長い。
人がゆうに5~6人は並べるほど広く、床は綺麗にワックスがかかって輝いている。
しかしすでに朝のホームルームが始まっていることもあり、廊下には誰一人としていなかった。
静かな廊下は、ただ窓から入ってくる光りに照らされているだけ。
何とも平和な一時である。
しかしその静寂を打ち破るような、けたたましい声が響いてきた。
「ちぃいこぉおくぅうっ!」
ドドドドドド―――
一体どこから声を出しているのだろうか。
一瞬そう思ってしまうくらい、その声は切羽つまった低い声だった。
そしてその声と連動する、地鳴りのような足音。
この状況からして教室まで走って行っていることはわかるが、その顔は阿修羅のごとく。
いやそれ以前に、その走る姿は一陣の風のようである。
もちろん誰もいない廊下で目撃者もとい邪魔者がいるはずもなく、教室まで鬼のような速さで走っていったのだった。
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