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「すいません、遅刻しそうになりましたっ!」
朝から猛スピードでダッシュだったので、汗はだらだらと垂れてくるうえ呼吸が辛い。
心臓も早鐘を打っているが、それを諌める時間はない。
そんな思いと乱れた呼吸で教室の扉を勢いよく開けると、目の前には何故か少しチョークの粉がついた黒板消しが迫っていた。
「遅刻しそうになりましたではなく、遅刻しましたの間違いじゃ、ぼけぇっ!」
「グヒャアッ!?」
クリーンヒットッ!
黒板消しは空気を切り裂きながら一直線に向かい、スカーンという気持ちのいい音と共に額に見事に命中した。
それと共に、怒声が響く。
「こんの、たわけっ!
入学してまだ間もないというのにもう遅刻かっ、北野旭!」
「すいません、馨先生……」
その人物―――旭は黒板消しが見事命中した頬をさすりながら、よろよろと立ち上がる。
そして壁づたいに自分の席まで行くと、崩れるようにして座った。
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