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机に突っ伏したその姿は何とも疲れ果てており、口から魂が半分くらい抜けるような錯覚をおこしそうである。
それに乱れた赤みの強い茶髪が顔を覆い隠し、何とも不気味な雰囲気を醸し出していた。
しかし馨はそんな旭のせいで若干重くなった空気を気にすることなく鼻を鳴らし、未だに収まらない怒りを秘めた瞳で隣を見た。
「すまないが、あの遅刻してきたクソバカのためにもう一度自己紹介を頼む。」
そう言ってもう一度旭に鋭い視線を投げ、黙って教壇をおりた。
もちろんそんな悪意の満ちた(?)視線に気がつかないわけなく、旭はビクッと過剰に反応して前を向く。
そして、旭は見た。
艶やかな黒髪に、漆黒に輝く瞳。
その容貌はどこか幼さを残しているが、柔和な笑みが大人っぽさを醸し出していた。
その反する雰囲気が、一瞬にして相手を虜にする。
すらっとした長身ではあるが、かといって細すぎるわけではない。
まさに恰好いいというよりも、綺麗という言葉が似合いそうな人だ。
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