8319人が本棚に入れています
本棚に追加
/990ページ
少し大馬鹿野郎もとい大馬鹿娘という所に力が入っているが、それ以外はいたって普通。
私が不思議に思いながらも恐る恐る目を開ければ、そこにはいつの間にか鞄を持った彼がいた。
全く気配を感じずに百面相をしていたかと思うと、何とも気恥ずかしい。
「よろしくお願いします。」
「あっ、はい……」
爽やかな鷹夜の笑顔につられ、私は戸惑いながらもニヘッと抜けた笑みを向けた。
確実に可愛くない笑みだろうけど。
そんな私に彼は微笑み、席についた。
「まったく……では華野が入ってきたことだし、私ももう一度自己紹介しておく。」
そう言って馨はチョークを持ち、さらさらと達筆な字で名前を書いた。
「私はこの1年1組の担任をすることになった、酒井馨だ。
何かわからないことがあるようなら、いつでも聞きにきなさい。」
馨は少し高めのヒールをカツンと鳴らしならが生徒たちを見渡し、口の端だけを笑みの形に歪めた。
その姿はどこか妖艶であるが、全くいやらしくない。
例えるならまさしくキャリアウーマンといった感じで、凛としたその姿に生徒たちは皆自然と背筋を伸ばした。
.
最初のコメントを投稿しよう!