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藤原は怒りを帯びた大蔵の話にしばらく耳を傾け、相づちをうちながら聞いていた。
そして大蔵の文句を一通り聞き終わると、先程までのおちょくるような口調をやめ、真剣に話しはじめた。
「そうだな。だか、そんな劣悪な環境の中でも、ハンドボールは出来た。違うか?」
「それは…そうですけど……」
「文句ばかり言うな。お前は俺と同じで、ハンドを取ったら何も残らない人種だ。俺を失望させるなよ。」
大蔵は沈黙した。
こういう時の藤原には昔から妙な説得力があった。
ハンドボール経験者の心の奥にある、ハンドに対する想いを引き出すのに長けているのだ。
その対象になった者は必ずといっていい程、話を聞いてしまう。
大蔵もその例外ではなかった。
「まぁ、今回は海外に行けなんて酷なことは言わん。国内で、しかもお前の家から十分通える場所だ。しかもちゃんと金も出る。」
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