シンメトリー症候群

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ドアの際に立ち、世界が流れるのに身をまかせた。月があとをつけてくる。 ドアの向こう側に、昼間見た淡い色の瞳をした女の子が、ふてくされた表情でこちらを見ていた。ほんとうに愛想のないやつ。頬をつねりたくなる。彼女の後ろで星が瞬いた。一番星みーっけ。 車内に鼻の詰まったアナウンスが響く。 カボチャ電車は駅と駅を繋ぎながら、発車と停車を繰り返した。わたしはドアの際に立ったまま、家へと近付く。動かずとも、動いている。その光景がなんだか滑稽に思え、にやりとした。すると、ドアの向こうの女の子もくすりとした。あ、なんだ、笑えるじゃん。 月が雲に隠れた。輪郭がほんわか滲む。足下を走る線路は、今もやっぱり平行なんだろうな。 今日の夕食はパンプキンスープにしようと、わたしはひそかに思った。 「アクセントにペースト状の玉葱を入れるのはどう?甘みが増すわよ」 ドアの向こうの女の子も賛同してくれているようだった。 いつの間にか、また月が顔をのぞかせていた。そうね、たまには月光浴というのも、なかなか贅沢かもね。
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