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「じゃあ…ありがとう皆さん。お邪魔しました。」
大きな我が家な門の前で、克也が笑う。
その顔が朝日に照らされて輝いていた。
家族総出で見送りに出てきたのに、相変わらず海斗は腕組みをしたまま横を向いている。
「頑張ってね、克也。」
何も喋らない海斗の代わりに笑顔で声をかけた。
克也はチラッと海斗を見てから苦笑する。
「うん、頑張るよ。じゃあ…」
ああ…やっぱり海斗の態度が悪いから気にしちゃってるんだ…。
切ない気持ちのまま、笑顔を作って克也の背中を見つめた。
克也が少し遠くなったその時。
「おい!!」
黙っていた海斗が急に叫ぶ。
私達と同じように目を丸くした克也が振り返った時、海斗がちょっと照れたように言った。
「……俺が家に居る時なら…いつでも遊びに来ると良い!」
え………。
一瞬みんなが固まり、次第にクスクスと笑い出す。
その言い方がなんとも海斗らしくて、笑いが止まらなかった。
「そうだよ!待ってるからね!!」
私も叫ぶと、克也が泣きそうに顔を歪めぶんぶんと手を振る。
その姿を見送り、隣の海斗の横顔をチラッと見た。
「…そんな海斗を愛してるわ。」
笑いながら言う私には答えず、海斗の大きな手が私の手を包んだ。
END
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