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宿を出たハスタは、とりあえずバーに向かう。
たまには大人の一服もいいだろうと思いながらドアを開けると、そこにはバーの雰囲気が似合わない、リカルドがいた。
「ありり?リカルド氏?」
「ハスタか」
「めっずらし~。リカルド氏ってお酒飲むんだ」
「水割りだがな」
リカルドは持っているグラスを軽く振る。
「たまには一緒にどうだ?ガキ共の相手は疲れるだろう」
突然の言葉にハスタは一瞬固まるが、すぐにいつもの表情に戻る。
「珍しいこともあるなァ。」
「今日は奢りだ」
「・・・お言葉に甘えて。」
ハスタは、リカルドの隣に座り、カクテルを頼む。
そしてリカルドに顔を向ける。
「ホントに、どうしたんデスカ、オマエ」
「わからん。今はそういう気分なだけだ」
「ふーん・・・」
カウンターテーブルに頬杖をついてムスッとするハスタに、リカルドは口先で笑って酒を飲む。
しばらくしてハスタのグラスにカクテルが注がれた。
その色は、透き通る深紅。
血の色とも言えるその色は、ハスタの魅力をさらに強めるものである。
「あーっ、リカルド氏、もしかしてオレに見惚れてマスカ?」
「うるさい」
「あっはは~図星ィ」
茶化すハスタに仕返しをしてやろうと出方を窺っていると、カクテルを口に含んだ。
これはチャンスだと思い、一つ質問してやる、リカルド。
「ベルフォルマのことで、悩んでいるのか?」
「んぐぅっ!?・・・ゴホゴホッ」
予想通り、ハスタは咳込む。
吹く、までいかなかったのが少し残念だが。
「ば、ば、バカじゃねぇの!?」
焦ると標準語に戻るハスタに、リカルドはらしくもないが大爆笑する。
顔を真っ赤にして怒鳴るハスタを宥め、黙らせる。
「図星だったようだな」
「ぅ・・・はいはいそうデスヨ。オレはできそこない君が大好きで堪らないんデス~」
「何を悩む必要がある」
「ふぇ?」
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