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「別にいいのよ? 私みたいに未練だらけの人間は、亡霊だの何だのになって、その未練を晴らすためだけに動くようになる。ただそれだけ」
奈津はお茶をすする。
幽々子はふっと目を閉じた。
「果たしてそうかしら?」
「……?」
幽々子はお茶をすする。
桜が風に舞った。
「今のあなたを動かすもの。それは未練や恨みなんかじゃないような気がするのよね」
「何を言っているのよ。私は源への恨みだけで動いている。それ以外にないわ」
二人は互いにお茶をすする。
「今の源は、刺しても燃やしても、死ぬどころか傷ひとつ付かない。だから、私があいつと一緒の場所に留まって、一生をあいつへの恨みに捧げることにしたの」
留まる理由を述べながら、奈津はお茶をすする。
「逆に……」
幽々子は湯飲みを口に持っていった。
「もう源は死なない。だからあなたはもう、源を恨むことを半ば諦めているんじゃないの?」
「……!」
桜吹雪が舞った。
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