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奈津と幽々子は庭先に腰掛け、桜を眺めながらお茶を飲んでいた。
奈津が半分ほど飲んだ時、ふぅと一息ついてこう言った。
「それで?」
「んん?」
幽々子は湯飲みを口もとに持っていったまま、穏やかに微笑みながら奈津の方を振り向いた。
「何か話したいことがあったんじゃないの?」
わざわざ、家に二人しかいない状態で、お茶に誘うのには、何らかの理由があるはず。
奈津はそう思っていた。
幽々子は視線を桜に戻し、しばらく黙っていた。
顔はまだ微笑んだまま。
でも、次第にゆるさはなくなりつつある、と、奈津は感じた。
幽々子の中にある心の流れが、わずかに変わったからだ。
「このままお茶を飲むだけで、終わらせてもよかったのに」
幽々子は残念そうに言うが、奈津は皮肉な口調で言った。
「私は、面倒なことは早めに済ませたい性質なの」
そう言われた幽々子は、静かに湯飲みを口に持っていき、お茶をすすった。
表情からゆるさが消えかけている。
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