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「…きなさい……きなさい、少年。起きなさいってば」
「あ…あぁ?」
真っ先に見えたのは、覗き込んでいる帽子屋。
「オオ、生きてたネ?すごいネ、すごいネ?」
「おぉーぅ…」
三月兎が、両手の袖を叩いてはしゃいでいる。
「大丈夫かい?」
白兎も、こちらを覗き込んでくる。
「あー…痛ー…ってさっきの奴は!?」
勢いをつけて上体を跳ね上げる。
「私ならここだ」
声がしたのは、丁度テーブルの向こう側。
「んの野郎…って、怪我してるのか?」
そこにいたのは、足首まで届きそうな、癖のある金髪をした少女。
異様なのは、その瞳と、その服装。
ツリ気味の綺麗な鮮血色の瞳。
その凹凸の少ない身体を覆う服装は、陽気なこの場には合わない、細身の黒いロングコート。
さらに足元を固めるのは、あぁ、また痛そうな外見じゃないかと言いたくなる黒いブーツ。
白い肌と端整な顔立ちは、もう見慣れたので特筆しない。
そして怪我とは、ザックリと切り裂かれた肩の傷のことだ。
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