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今日は大学の授業もバイトも入れてないと言っていたから、
なおさら時間を持て余した彼は、一人家でせっせとカレー作りに励むに違いない。
徒歩で約20分。
利君の住むマンションから大学までは、かなり近い。
キャンパスの門を抜けて、少し古びた灰色の校舎に入り、自分の受ける講義の教室に向かう。
講義開始の10分前だから、教室の中には、まだまばらにしか人が居ない。
私はいつものように、教壇に近い、前から二列目の席に着く。
コートを脱ぎ、バッグの中からノートやふで箱を取り出していると・・・
「ハールカ!おはよ!隣、空いてるか?」
同じ学部の友人・広崎裕司が、私の肩に手を置いて声をかけてきた。
少し高く弾んだ声。
獲物を狙うように光る、瞳の奥。
・・・・めんどくさい奴に会っちゃったな・・・。
内心そう思いながらも、私は顔に笑顔を貼りつけ、
「うん、空いてるよ。裕司、座る?」
と、いつものように可愛らしい甘い声で返事をする。
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