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そして相変わらずドアから顔だけを出したまま、私に向かって手招きをする。
「良かった。ちょうど今カレーできたところだから。
冷めないうちに早く食べよう。」
彼の少し自慢げな顔を見るに、今日のカレーは格別うまくできたに違いない。
空腹が、期待を更にふくらませる。
ブーツとコートを脱ぎ、私もリビングに移動した。
ここらへんの物件にしては少し広めの8畳半のリビングの中央にある、脚の低くて透明なサイドテーブル。
その上には、一般的なモノよりも少し赤めの、
美味しそうに湯気立ったカレーライスが二つ用意されていた。
お茶を入れたコップもある。
利君はキッチンからスプーンを持ってき、テーブルの上に置いてから、
柔らかなカーペットに腰を下ろした。
「俺もお腹すいたし、早く食べよっか。今日“も”自信作だよ。」
「一日中動いてた私と違って、利君は今日ずっと引きこもってたくせに。お腹すいてるの?」
冗談まじりにそう言うと、利君は“心外だ”とでも言いたげに、眉をピクっと動かした。
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