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『――シャーク』
ある天気の良い日、ワタシは長いソファーで寝そべって本を読んでいた彼の名を口にした。
「何だい、サクラ?チェスの相手だったらこれを読んだ後にしてあげるからもう少し待っててくれないか。今、面白い所なんだ」
顔を上げず、片手をヒラヒラと振る彼。
部屋には蓄音機が小さく、イオシフ・イヴァノヴィッチの¨ドナウ川のさざ波¨が流れている。
一体何の本を読んでいるのかと思い、彼の手の中にある本を見た。
【誰にでも簡単に作れる呪い人形(ワラ人形)と、出来る黒魔術❤】と、タイトルが金色で書かれていた黒い本だった。
しかも最後の【❤】は何故かピンク色。
彼の、このような不可解な読書レパートリーは今更始まった訳じゃない。
この前なんか【自転車と自動車の違い!】など、自転車や自動車の部品が細かく解説されている厚い本を読んでいた。
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