日々の色

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朝、目が覚めると9時だった。 ふと目を擦りながら隣を見た。 『かめ、おはよ。 そして久しぶり。』 そこに居たのは、呼んでほしかった人だった。 『山P、おはよ。 ホント久しぶりだな。』 『これ、かめに持っていけってうるさいおたくの恋人さんからの差し入れ。』 『そっか。』 『いいえ。 ちゃんと看護師さんに聞いたらしいよ、差し入れして駄目なものはないかとか。』 『そっか。』 『愛されてるね。』 『恥ずかしいな。 ねぇ、悪いんだけどベッド起こしてくれない??』 『了解。』 そう言ってベッド起こしてくれた。 『ありがと。』 『でも、ビックリした。 仁からかめが俺に話があるって聞いたとき。』 『なんかさ、話したいんだけど話せなくて。』 『いいよ、今日は思う存分言いなさい。 この俺が話を聞きますよ。』 『山Pには感謝してるんだ、俺。』 『...。』 『あの日、山Pが近くに居なかったらきっと死んでたと思うし。』 『...。』 『今日だって話を聞いてほしいって頼んだらこうして来てくれた。』 『...。』 『ありがとな。』 『当たり前のことをしただけ。』 山Pのその言葉に俺は笑顔を見せた。 そして、覚悟を決め、話を続けた。 『俺は、頑張りたい。』 『...。』 『俺を助けてくれた山Pのために。 側で支えてくれてるメンバーのために。 こんな姿なのに側に居て好きって行ってくれる仁のために。 俺の復帰を陰で支えてくれてる事務所やマネージャーのために。』 『うん。』 『一日でも早くって気持ちだけで、体がついていかなくて。』 『...。』 『自分の体なのにって思うんだよ。』 『...。』 俺は顔を外に向けた。 『この前、ここの窓を開けて風を感じてたらさ、自動車の音が聞こえてきた。』 『...。』 『その音聞いて、体が自然と震えてて、いくら止めたくても止まんなかった。』 『....かめ。』 『情けなかった。』 そう言って俺は苦笑した。 『...そっか。』 『あ-すっきりした。 聞いてくれてありがと。』 『いいえ。俺は、かめが自分自身で決めたことが正しいと思ってるから。』 『山P。』 『焦んなよ。終わりを焦って見つけようなんて無理な話なんだから。』 『...。』 『一つずつクリアしていくしかないんだからさ。』 『おう。』 『じゃあ、そろそろ帰るかな。 選手交代ってことで。』 そう言って山Pは立ち上がりドアの近くに居る、俺の仲間に声をかけ出ていった。
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