第三章 今日は帰しません? あ、違う。

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 呪いはすんなり解いて貰って、俺は元いた和室に連れ戻されていた。あ、でも外はいつの間にか茜色に染まっている。つまり俺は夜に轢かれそうになって気を失って、昼過ぎまでは寝てたんじゃないだろうか、と思う。  して、部屋に戻ると布団は畳まれて、紫さんの姿がなく、ただ部屋の真ん中にポツンと刀があるだけ。 「……おかえりなさい、でいいのかしら」  神宮寺三倉からそんな言葉を聞くとか、誰が想像したか。ホントびっくりですよ。  そういえば話の途中だった気がするけど、まあ、大したことでもないので今は聞かないでおこう。ほら、帰れるのなら別に言葉を交わす必要もないわけだし。 「まあ、いいんじゃないかな。部屋に帰ってきたわけだし」  呪いを解いてもらった上に、頭痛もいつの間にか治まって、元ラスボスさんとも普通に会話が成り立つ俺。  というよりも、彼女が現在刀の中にいるおかげで、特に危機感とかないわけで。どう考えても自由自在に動くことなど適わないようだし。  あ、これは聞いておこう。 「そういえば、もう以前の姿には戻れないわけ?」 「……戻れないとは言わないけれど、戻ったところでなんの得もないからいいかと思っているわ」
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