序章

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 町に代々伝わる(らしいが、今もなお詳しいことは知らない)妖刀を偶々手にして、偶々子供を攫う妖怪を目撃しそれを斬った。  それからだ。  それから、町の妖怪たちは俺を標的として、ありとあらゆる手段を使って襲いかかってきた。友人、家族、町人、様々な人たちを使ってきたのだ。  俺はすべて護ろうと必死になった。だが、俺一人の力で限界があった。犠牲となった人は、両手の指の数じゃ収まりきらない。当然、怨まれた。そして俺自身、自分の非力さを怨んだ。  だからだろうか。他者や俺自身の怨みに反応したのか、刀は新たな力を発現した。確か、高校二年生の春頃か。  新たな力は、妖怪をまったくものともせずに排除していった。  そしてその年の夏。俺が刀を手にしてから三年目のその日、そいつは現れた。  神宮寺(しんぐうじ)三倉(さくら)。  名前の通り、この町に古くからある家系の一つで、彼女はその四代目当主だった。  彼女は俺の前に現れて、すべては自分が仕掛けたことだと口にした。本来はこの町を消し去るのが目的だったが、俺という存在が現れたために、標的は俺一人となっていた。しかしどんなに強力な妖怪たちを嗾(けしか)けても、俺を殺すことが出来ない。痺れを切らし、すべての元凶である彼女自ら出てきたのだ。
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