出会い

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気がつくと、規醒(きせい)は静寂な虚空の中に佇んでいた。 見渡す限り続く闇。 何も見えず、何も聴こえず、立っているのかすら認識できないほどの暗黒の世界。そんな中で、規醒だけが淡い光に包まれ写しだされていた。 (ここは──?) 規醒は、何故こんな場所に自分がいるのか理解できずにいた。 「嫌な場所だな」 嫌な感じがする、と規醒は思った。 闇がまとわりついてくるような、今にも自分が無くなってしまいそうな、何とも言えない嫌悪感。 一秒でも早く抜け出したくて、規醒は出口を探そうとするが、どちらへ向かえば良いのか解らずただ立ちつくしていると、ふと背後で何かの気配を感じた。 振り向くと、ぼんやりと光る球体があった。 何だろうと思い、規醒は光の方へ向かう事にした。地面に足を着けている感覚はないが、どうやらちゃんと歩けるようだ。 徐々に光は強くなり、十メートルほど手前まで近付いた所で、規醒は歩みを止めた。 光の中心には、小さくうずくまる子供の姿があった。 自分と同じように青白い光に包まれながら、膝をかかえ眠るようにうずくまっている。顔を伏せている為によく分らないが、男の子だろうか、と規醒は思った。 何故こんな所に子供が? と疑問にも感じたが、光を帯びたその姿は美しくもあるが、どこか寂しく、規醒はその子供が泣いているかのようにも見えた。 (──泣いているの?) 側に寄ろうと、規醒は再びゆっくりと歩きだした。
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