出会い

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そうして手前まで近付いた所で、規醒は膝を折りそっと手を伸ばした。触れた光に熱はなく、規醒はそのまま少年の髪に触れる。 すると、少年の肩がピクリと動いた。ゆっくりと顔があげられてゆくと、可愛らしい大きな瞳が姿を現し規醒を見つめた。 「こんにちは」 規醒は、見つめる瞳に笑顔を返した。 少年は大きな瞳をさらに見開き、まるで幻を見ているかのような驚きの表情で、じっと規醒を見つめていた。 年は十歳くらいだろうか。 少年には間違いないようだが、そのあどけない風貌は、少女のようにも見える。 「僕は規醒。巽(たつみ)規醒」 じっと見つめる少年に、規醒は笑顔のままで話しかけた。 少年の瞳は依然驚きに染まっていたが、どこか歓喜の色を漂わせていた。 「き……せい?」 少年がようやく口を開く。弱々しいが、高く可愛らしい声だ。 「うん。君の名前は?」 「……僕の、名前……?」 少年は規醒から視線を逸らし、そのまま沈黙する。自分の名前を覚えていないのか、思い出そうとしているようにも見えたが、答える気配はなかった。
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