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「ケホッゴホッ?!」
「そこだッ!」
煙が一瞬フランの視界を奪いさる。その隙を逃さない様に俺は左手で掴む一本を振りかざす。
その一匹は煙の中に突っ込み、何かに絡み付く感覚がはっきりと伝わってくる。
「王手……って所かフラン?」
「……むー」
煙が晴れるとそこには山俣遠呂智に、まるで蛇が獲物を捕まえ捕食する様な光景。フランの体を山俣遠呂智が絡み付きその口から銃口を覗かせる。
「悪いな。女の子を怪我させる訳にはいかなくてな、だからそんな膨れっ面はやめてくれ」
「違うヨ、まだ終わってなイもん。チェッくメイトは友だよ?」
フランの言葉と同時に背中に悪寒と戦慄が走る。反射的、何も判らぬままただ本能に任せ前方に転がり込む様に飛び退く。
その行動とほぼ同時のタイミング、俺の背を掠める様に灼熱の剣が通過し山俣遠呂智を根元から切り払われた。
「あ、避けられチゃった」
「もう、あんな事言っタら避けられチゃうに決まってるジゃない」
「……あっぶな。いつの間に……」
背後から聞こえる《二人》分のフランの声。振り向きそこに居るのは巨大な炎の剣を持ち、片や楽しそうに笑う二人のフラン。
しかしフランは三つ子な訳が無い。と、言うことはスペルカードって事か。
熱に溶かされた様に切られた断面を見ればその姿を維持出来なくなったのか砕け始めた。
連動するようにフランに絡み付く山俣遠呂智もその姿が崩壊を始まる。しかし自然と崩壊するよりも早く、もう一人現れたフランがその右手を振りかざすと次の瞬間には跡形も無く砕け散った。
《四人》
目で確認出来るのは四人のフラン。高速で動いていて残像が残っている等ではない。残像と言っても質量があるのだから質が悪い。単純に四対一、フラン相手なのだからこれはキツい。
『禁忌イくヨ、友!』
ステレオの様に声が重なるフラン達、そしてそれぞれの手にはカードが握り締められる。
「……こりゃ参ったな、四対一か。そんな状況は余り好ましくないな。だから、《数秒》だけ付き合ってやる」
俺も負けじと一枚のカードを取り出す。先にフランに絵柄を見せるとそのカードを読み上げる。
「速符」
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