動向

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話し合いに話し合いを重ねて準備は着々と進み、残りは東尾の交渉のみとなった。 峯たちと偽の契約を結ぶよう、取引先へ約束を取り付けることに成功した東尾は偽りの情報を流した。 「『以前の件、本来ならあなたたちに鞍替えしたかった。 だが、松野たちの妨害にあい目的は叶わぬばかりか迷惑をかけてしまった。 お詫びというわけではないが、ブツをいつもより安く提供したいと思っている。 今後のことも含めて話し合いたいので、半月後の午後10時にあのときの場所へ来てもらいたい。 なお、当日は契約破棄に怒った松野たちが襲ってくる恐れがあるので、報酬を出すから護衛を頼みたい』 要約するとこんな感じだな」 松野たちの取引先の商人から届いた書状を一見すると優男 ‐小倉は机におく。 「へぇ、ならあのとき俺たちは奴らになりすましておいて後で正体を明かしても良かったわけか」 腕を組んでいる精悍そうな男‐黒田は言った。 「でも、妙な話だ。 嫌ならあれ以来、今まで取引を続けた理由がわからないのだが」 黒田より小柄だが精悍そうな男‐藤代は首をかしげる。 「それをふっ切るキッカケがこれだろ、今回の東町進出計画。 やっぱスパイを潜り込ませて正解だったぜ、奴らがこんなにもスキをさらしてくれるとはな。 このチャンスを逃す手はない」 同じく小柄だが精悍そうな男‐亀山は微笑んだ。 「あちらさんの乗り換えと東町進出がどう結びつくんだ?」 藤代は尋ねる。 「考えてみろよ、取引となれば必ず幹部が出てくるんだぞ。 けど、入手情報によるとあちらさんの指定日と東町進攻が被るんだ。 ってことはな、須崎埠頭での警備は必然と手薄になる。 オレたちとしては幹部暗殺にはもってこいだし、あちらさんは身の安全を確保できる。 俺らが守ることになるんだから」 黒田が亀山の代わりに答えた。 「多分、須崎埠頭には松野か東尾が出てくるな。 小倉は拾いきれなかったみたいだが、さっきの書状には指定日に松野たちには契約破棄の話をすると書いてあった。 契約に関することとなればボスの松野かブレインの東尾が来るだろ、どっちを消しても利益は莫大だ」 ほころびながら亀山は付け足す。 「峯、どうする?」 盛り上がる一同を横目に小倉は峯に話を振った。 「お前らの持つ目は節穴なの?」 峯の言葉に一同は黙り込む。
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