29人が本棚に入れています
本棚に追加
峯たちが東町進攻開始日と認識した日の13時、村岡たちは早良町へ向けて出発した。
‐14:40‐
松野の携帯が彼のポケットで震えている。
「村岡か」
画面を見て発信者を確認して電話に出た。
「おう、村岡。
もう着いたか?」
「市街地に着いたよ。
小笠木峠(早良町と那珂川の間にある峠)に検問がなかったから大して時間はかからなかった」
「わかった、じゃあ奴らが事を起こすまで待て。
何かあったら連絡してくれ」
「オッケー」
電話が切れた。
「糟屋郡の奴らには通行許可はもらってる?」
松野は東尾に尋ねた。
「大丈夫、今朝も確認を取った」
「よし。
取引先からは何か連絡あった?」
「いや、何も。
着いたら連絡するようには言ったが」
以降、二人の間に会話はなかった。
二人、いや四人は須崎埠頭にいる。
相沢と浦城を伏せさせて、松野と東尾は商人を待っている。
契約破棄に怒った松野と東尾が商人を追いかけるフリをして峯たちのいるところへ行き、そこに相沢と浦城が飛び出して手早く仕留めるという筋書きである。
商人には峯たちと連絡を取らせて、都合の良い場所へ誘き寄せてもらう手筈となっていた。
‐15:00‐
大野城では桑田隊が出発した。
本当に東町に進攻するつもりはないので大野城から太宰府へ行き、そこから糟屋郡へ入るという遠回りをして時間を稼いで早良町の部隊が攻めてくるのを待つ予定である。
一方、春日を出発した江嶋隊は大野城から太宰府へ行って(西から春日・大野城・太宰府である)糟屋郡へ入るということになっている。
江嶋が大野城に入ったとき、携帯が鳴った。
「…中原?」
画面を見て江嶋は首をかしげる。
「中原、どうし」
「え、江嶋さん、一大事だ!
那珂川で反乱が起こった!
博多南駅付近が大変なことになってる!」
江嶋が電話に出るが早いか、中原はまくしたてた。
「なっ…」
「本部の警備があるから、おれたちは動けない。
良かったら鎮圧してくれないか?!」
「待て待て、松野の許可は得たのか?」
驚きながらも江嶋は尋ねた。
「今、関が鎮圧に向かってるけど一人の手勢じゃ力不足なんだ!」
答えになってないことを話す中原。
「せ、関が勝手に動いたのか」
「だって松野さんと東尾さんが電話に出ないから!」
「しかしだよ」
困りながら江嶋は諭そうとする。
「頼むよ、江嶋さん!」
江嶋は目をつぶって顔をしかめた。
「…わかったよ」
最初のコメントを投稿しよう!