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「行ってくれるの?」
「東町への『見せかけ』は桑田だけで十分だ。
おれがいなくても問題はない、じゃ」
江嶋は電話を切った。
「進路変更?」
隣にいた大柄な男が聞く。
「…どれだけお人好しなんだよ、おれは」
額に手を当てて江嶋は嘆いた。
「那珂川で反乱が起こったみたいだが…」
「なんで聞いてるんだお前は」
すかさず江嶋は突っ込んだ。
「あれだけ大声でわめいてたら嫌でも聞こえてくる」
男は気にする様子もなく答えて、さらに続けた。
「本当なら桑田を助ける義務は無いんだがねぇ、連合組んでるから仕方なしってとこかな」
「福岡地区を制覇したら同盟なんて崩れるに決まってるだろ、一緒に甘い汁吸おうって仲間じゃなくて筑紫郡への外敵に立ち向かおうっていう運命共同体だから。
その頃には久家、お前がおれにとってかわってるよ」
久家と呼ばれた男は苦笑して
「何を…おれにそんな野心は無い」
と言った。
「そりゃわかってるけど、福岡地区を制覇したらそこで『契約』は終わりだよ」
江嶋も苦笑した。
「まだまだ先の話だから、想像できないな。
…まぁ、まずは目前の問題だ。
そろそろ行く?」
久家は話を切り換えた。
「そうだな、行くか…予定が変わった、今から那珂川の反乱を鎮圧しにいくぞ!
全員、那珂川へ急げ!」
切り換えに応じた江嶋は部下に命令を下した。
反乱は那珂川と春日の境目付近で起こっていた。
那珂川の警官隊は既に倒されている。
「…本部、応援を頼」
辛うじて話せる警官が本部に連絡していたが、反乱軍の兵士が通信機を鉄棒で壊し、もう一人が警官に殴打した。
「平本様、次は春日ですかい?」
通信機を壊した兵士が司令官らしき筋肉質な男‐平本に聞く。
「あぁ、ひとまずはな。
黒田と藤代がこっちに入り次第、奴らの本部へ向かう」
「わかりました」
兵士は返事をしてバイクに乗った。
40人くらいの兵士が続けてバイクに乗っている。
「よし、行くぞ!」
平本の号令のもと、兵士たちはバイクを走らせた。
思わぬところで、東尾より峯と小倉が一枚上だったようだ。
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