挟撃

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「お前がいくら強かろうと、この体勢では無力だな」 絞める力を強めながら平本が言った。 久家は相変わらず鉄槌打ちを出すが、力が入ってないので平本は動じない。 「苦しみが長引くのは嫌だろ、そろそろ終わらせてやるぞ」 平本はさらに絞める力を強める。 「…動きが速くパワーもあるな」 「おいよぉ、ほめてくれたって外さないぞ?」 久家のつぶやきに大した反応を示さない平本。 「お前は確かに強い。 …が、おれを倒せない」 「何の強がりを」 久家の言葉を鼻で笑って平本は力を強めた。 「なら教えよう」 久家は自分の首と平本の腕の間に自分の手を入れた。 「うっ?!」 一瞬驚いたスキをついて久家は平本の腕を外して素早く起き上がり、平本の首を両手のチョップで挟み込んだ。 「自分の力を過信して相手を見る目が無い、それがお前の弱点だ」 平本の耳にその言葉が入ったとき、彼の視界は閉ざされた。 平本の顔を右手でしめつけたまま久家は立ち上がり、彼を立たせた。 「相手を見る目が無いばかりにこんな目にあうとはなあ」 平本のこめかみをしめつけて久家は無感情に言った。 「さっきから何を言ってる、お前なんか返り討ちにする自信があるから」 そう言って平本は久家の腹に肘打ちを叩き込む。 「がっ」 思わず久家は手を放した。 「相手を見る必要もないってわけだ」 平本は開けた目で真っ先に久家を見たが、同時に衝撃的な光景が視界に入った。 「…?!」 久家との勝負に夢中になってる間に部下は全滅している。 そっちに気を取られたスキをついて久家は平本にフックを叩き込んだ。 「よそ見する余裕があるほどお前は自信があるのか、大したものだな」 のけぞった平本に久家は言う。 そこに江嶋がやってきた。 「お前の部下は全員倒した、あとはお前だけだ」 「2対1か、あいつらを全滅させた奴とこいつ相手とは燃える…と言いたいところだが」 言いながら平本は周囲を見回した。 「逃げるか」 江嶋は双鞭を構えて平本の前に立ちふさがる。 「残念ながら、それに近い形になるかな。 他の奴が弱らせたお前らを倒すなんて、オレからしたら勝ち逃げと変わらない」 「勝ってもないクセして」 久家がそこまで言ったとき、突然一人の男が飛び出してきてバットを振り上げた。 「うおっ?!」 思わず久家はひるむ。 「待たせたな、平さん」 男は平本に話しかけた。
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