挟撃

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「ヒーローは遅れてくるってか、黒田」 平本は笑った。 「黒田?!」 江嶋は男の方を振り向く。 「峯の仲間の黒田隆行(クロダ タカユキ)か?!」 「お待たせ、平さんと悪役のみなさん!」 別の男が飛び出してきて、ラグビータックルで江嶋を引き倒した。 「藤代らしい粋な御登場だな」 平本と黒田は笑っている。 「同じく、峯の仲間の藤代直幸(フジシロ ナオユキ)か」 江嶋を引き倒した男を見て久家はつぶやいた。 建物の影から40人ほどの兵士が姿を現した。 「形勢逆転だな、数はこっちが上だが体力を消耗したこっちとそうでないあいつらなら不利なのはこっちだ」 そう言って久家は足元に落ちていた鉄棒を拾った。 「相手は江嶋と久家か。 楽勝だぜ」 ニヤニヤしながら藤代は指を鳴らす。 「あいつ、久家っていうのか。 意外と強かったぞ」 平本が注意した。 「平さんに強いと言わせるとはなかなかだな、あいつは俺がもらうか」 黒田は意気込んでいる。 「なら、おれは江嶋にしようかな。 見えた勝負とはいえ、少しは楽しめそうだ」 軽くストレッチをしながら藤代は江嶋を見た。 「オレはザコの処理か」 苦笑いする平本。 「平さんはがんばってくれたから休んでもらっていいよ」 黒田は平本を手で制して 「やっちまえ!」 と叫んだ。 一気に40人ほどの兵士が江嶋隊を襲う。 「久家と言ったな、初耳な名前だが平さんが警戒するとは驚いた。 どれほどのものか直に確かめよう」 黒田は久家の前に立ち、バットを構えた。 「平さんとかいう奴と組んで内外の挟み撃ちとはご苦労なことだ、もっと苦労を増やしてあげるぞ」 鉄棒を構えて久家は黒田に近づいていく。 「少しは楽しませてもらわないと、でないと義賊の名が泣くぜ?」 藤代は冷笑したが、江嶋は黙っている。 「シカトかよ、おい」 「クズにかける言葉は持ち合わせていない」 冷静に江嶋は返す。 「てめえ! 素手で十分だ、ぶっ飛ばしてやる!」 藤代は江嶋に突っ込んだ。 座ろうとした平本のところに一人の大柄な男が飛び出してきた。 男は鉄槌を振り下ろしたが、平本は避けた。 「探したぞ、平本」 「関か!」 お互いに面識があるらしい。 「峯たちに手を貸すとはとんだ見込み違いだったな。 まぁいい、処罰は受けてもらう」 「あんたたちを黙認する、表の奴らに納得できなかったんでね。 そっちこそ、今までの所業の処罰を受けるべきだ」 関と平本の戦いが始まった。
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