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テーブルを囲む五人の表情は暗く、彼らの間に短いとは言い難い沈黙が漂っている。
空気は重い。
「…で」
誰かがつぶやいたが、反応する者はいない。
「…でさ」
つぶやいた男は今度ははっきり言葉を発した。
「帰国しないのか」
村岡は言葉をつなげた。
「バカ言ってんじゃねえ!」
松野の一言で、重い空気は吹っ飛んだ。
「ここを買い取るのにどれだけの金がかかったと思ってるんだ!?」
「いや、修理して金と引き換えで返そうよ」
押されながら村岡は答えた。
「買い取るだけじゃなくて、カラクリを仕掛けるにも金を使ったんだよ」
桑田は村岡に言って
「どっちかと言うと改造費の方が高かったな」
とぼやいた。
「返ってこない金の方が高いわけか」
一人で江嶋は納得している。
どうやら、連合の盟主・松野としては蔡権たちが討伐に来る危険性があっても元を取るまでここから離れたくないようである。
「まぁ、確かに損失の方が大きいが」
ようやく東尾は口を開いた。
「最初に言った通り、場所が奴らにバレてるわけだし。
あいつらが仲間を連れて来たらどうする?
たった二人に苦戦したおれたちに勝ち目はないぞ。
それに、ほとんどの兵隊は本土に置いてきたしな」
一同は黙って東尾を見ている。
「全滅の危険をおかしてまで『楚』に進出する価値はあるかな。
体という資本を失ったら何もできないから」
「…わかったよ、捨てるには惜しいが撤退しよう」
苦々しく松野は言い捨てた。
一同は片付けの準備をすべく部屋から出ていった。
「おれは明日、家主に返金交渉をしてくるよ」
江嶋と帰りが一緒になった東尾が言った。
「わかった、それにしても損失分はどうするんだ。
ここらの賊を討って財を奪うか?」
江嶋は尋ねる。
「賊って…家主たち自体がコインの『裏』に当たる存在だろうによ」
江嶋の問いに東尾は苦笑した。
「そうだったな、ここでは役人が『裏』も取り仕切ってるんだった」
少し笑って江嶋は自分の頭を軽く叩いた。
村岡と帰りが一緒である桑田はため息をついた。
「足掛け半年で手を引くことになるとは」
「改造費の半分は取り戻せたから松野が言うほど損失が出たってわけじゃないが…」
村岡の表情も明るくない。
「決まった以上はどうこう言っても仕方ないか。
本土は本土で厄介だが、斬鬼や蔡権レベルの奴はいないから、そこは楽だがな」
気を取り直す桑田に村岡はうなずいた。
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