帰国

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松野たちが向かったのは博多港である。 博多港で降りた彼らは本部のある太宰府へ向かった。 「…おれたちがタイムスリップしたのか、あっちがタイムスリップしたのか…」 「どうしたんだ?」 江嶋のつぶやきに村岡が反応した。 「杭州はこっちと違って時代劇でしか見ないような街並みだったなって思ってたんだ」 「そういや、オフィス街や鉄道なんてあっちにはなかったな」 思うところがあったのか、江嶋の言葉に村岡はうなずいた。 そう、新世界には新旧の文明が共生しているのだ。 地域によって発達具合にここまで差があることなど、本当ならまず起こり得ないのだが世帝の『再創造』によって不安定となった現世においてはこれが普通となっていた。 「ずいぶん早い帰りだな」 本部にて松野たちを出迎えた男‐相沢は驚いている。 「事情は後で話す、それよりこっちは何事もなかったか?」 松野が尋ねると相沢は渋い顔をして隣にいたいかつい男‐浦城と目を合わせて 「それも後で話す」 とだけ言った。 松野は幹部一同を集めて杭州退去の過程を話した。 「南方の『楚』を足掛かりに他国へも進出する手筈が、そんなことになろうとは…」 浦城はため息をついた。 「もういい、終わったことだ。 それに後処理は全部やったから当分は触れないことだし…それより相沢、オレたちがいない間に何かあったみたいだが」 松野は話題を変える。 相沢はうなずいて話し始めた。 「ふたつあってな。 ひとつ目はあれだ、早良町の奴らの件。 この前、こっちにヒットマンをやりやがってさ」 「なに、誰か狙われたのか?!」 思わず桑田が話に入る。 「そうそう。 まぁ、防ぎはしたが吐かせたら峯の手先だった」 桑田の言葉に反応しつつ相沢は話を続ける。 「へぇ、峯がそんなことをしやがったのか」 「あぁ。 こういう言い方は悪いが、松野たちはちょうど良い具合に帰ってきたな…どうも最近、峯たちが力を伸ばしているらしく、危ない芽は早めに摘んでおきたいって思ったんだ」 「そうだな、どのみちぶつかる相手なら小さなうちに叩いておいた方がいい。 俺らが出航する直前にも武器の横流しで一悶着あったからな」 相沢の話にうなずく桑田。 「あのことか」 村岡も話に入ってくる。
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