帰国

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「須崎埠頭での件ね」 相沢が言った。 「取引先にオレたちの名前を使ってブツを横取りしようとしたっけ、あいつら。 しかも、代金を踏み倒そうとしやがったよね…あそこで誤解が解けてなかったらオレたち、ヤバかったぜ」 「向こうは向こうでバレたことを逆恨みしているからなあ」 村岡の話に浦城が付け足す。 「いつ狙われてもおかしくない、ってか」 松野はため息をついた。 「…で、芽を摘み取るとのことだが」 話を切り出す桑田。 「おぉ、そうだな。 誰か、良い案はねえか?」 早速、松野は皆に尋ねる。 すぐに一人の男が発言した。 「小さなうちに潰しておこうとのことだが、正面からぶつかれば苦戦は必至だな。 そこで…」 「そこで何だ、島津」 軽薄そうな男‐島津に松野は答えを促す。 「俺たちも、奴らがしたように本拠地に少数の暗殺部隊を送り込もうじゃないか。 ただ、この前みたいに奴らがこっちを狙ってくる恐れがあるからこっちにも力は残しておこう」 「目には目を、か。 確かに幹部をまとめて殺れば後はどうにでもなるな」 満足したらしく、松野はうなずいた。 「他に何かある?」 改めて松野は尋ねる。 「俺は島津の案に賛成だな、強いて言うなら敵陣真っ只中だから討ち漏らしがあれば不利になることを考えると奴等を一ヶ所に固めた方が良いってことぐらいかな」 桑田が言った。 「しかし、奴らを一ヶ所に集めるとおれたちが不利じゃないか? あれほどの奴らが固まってるとなると」 江嶋が桑田に反論する。 「はぁ? それをどうするか今から考えるって話だろ」 すかさず桑田は噛みついた。 「お前とて奴らの強さを知らないわけじゃないだろう、話すべきは奴らを一ヶ所に集めると決めたうえで方法を考えることではなく集めるかどうかだと思うぞ。 なめてかかれる相手じゃないし…」 江嶋は切り返した。 「二人とも、落ち着いて」 静止する東尾。 「桑田の言う通り、奴らを一ヶ所に固めれば討ち漏らしは少なくなるな。 だが、江嶋の言い分もわかる。 百人力とも言える奴らを一ヶ所に固めたら、手間がかかるのは確定だな。 最小限の方法を考えよう」 東尾は両者の言い分をくんで提案した。
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