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俺らがこの文月(フミヅキ)学園に入学してからニ度目の春が訪れた
今俺の頭にあるのは新しいクラスの事だけである
「神裂、遅刻だぞ」
玄関の前でドスのきいた声に呼び止められる
声のした方を見ると、そこには浅黒い肌をした短髪のいかにもスポーツマン然とした男、『生活指導の鬼』西村教諭、別名『鉄人』
ちなみに鉄人というのは生徒の間での西村先生の渾名で、その由来は先生の趣味であるトライアスロンから来ている
「おはようございます西村先生」
「今、挨拶の間で失礼な事を考えなかったか?」
「はははっ、気のせいですよ」
「ん、本当にそうか?」
「本当ですよ先生」
「ならいいが………それにしても、普通に『おはようございます』じゃないだろうが」
「あ、すみません。えーっと―――今日も肌が黒いですね」
「………お前も俺の肌の色の方が重要なのか?」
溜息混じりに先生が呟く。こう言うということは、予想が当たったみたいだ
「その言い方から察するに、明久にも言われましたか?」
「ああ、そのとうりな………ほれ、受け取れ」
何かを諦めたような顔をしていた先生は気をとりなおして箱から封筒を取り出し、俺に差し出してくる
宛名の欄には『神裂 晃』と、大きく俺の名前が書かれてあった
「ん、ありがとうございます」
一応頭を下げながら受け取る
「それにしても、こんな非効率的なやり方でクラス編成を発表するのかいまだに分かりかねますよ」
「そう言うな、ウチは世界的にも注目されている最先端システムを導入した試験校だから仕方がないんだよ」
「まーそうですけど」
適当に相槌を打ちながら封に手をかける
どーせFクラスなのは分かっているので少しのドキドキもない
「神裂、今だから言うがな」
「はい、なんですか?」
「お前を去年一年見て思ったんだが、もう少しやる気を出したらどうだ」
先生が大変残念そうな顔で言ってきた
「あははっ、残念ながらこういう性格なんで諦めてください」
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