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すべてのはじまり
砂と木製の柵で整備された道を一匹の行商人が歩く。
いや、歩くと言うにはやや遅めのテンポで小さな足を交互に前へ前へと進めてゆく。
深い青色の瞳は真っ直ぐ地平線を見据え、快晴の空を思わせる水色の毛とウサギのような耳が風に遊ばれる度に靡く、やや古ぼけた革の靴がよりいっそう彼を大人びて見せる。
自称旅商人と名乗って各地を旅する彼はそんな素朴な道を歩いて次の目的地へと向かっていた。
人口数百程の村であるが、商売には意外にうってつけな場所でもある。
そもそも無許可で物を売ったりしているので、こういった場所では堂々と店を開けるのである。
慣れた手つきで荷物を広げ、ものの数分でちょっとした出店が村の隅に出来上がった。
並んでいるものは木を削って作ったアクセサリーや金属製の小物など、小さなフリーマーケットのような品揃えである。
とりあえずやってくる客には『運気』だ『健康』だのと適当に売り文句をつけて売り捌く、本日の売り上げもボチボチ…そろそろ客足も途絶えはじめ、品物を片付けていく。
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