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─陽が沈み、月が薄暗い夜を照らす。
稀に気紛れで吹いてくる夜風が凍える身を突き刺す。
この時期は夜になると冷える為、基本的に宿は予約で埋まってしまう。
それはこの村でも例外ではなく、彼は二件ほど訪ねてみたがどちらも既に満室であった。
布にくるまり唸る者が一匹。
吐息が白い綿菓子のようになり、空気中へ霧散して消えていく。
雨が降らなかったのが唯一の救いなのかもしれない。
静寂、野性動物の足音すら聞こえそうにないくらいの静寂。
まるで自分だけ世界から切り離されたかのような錯覚さえする。
樹木と言うには未熟な木に寄りかかり、未だ明けぬ空を見上げる。
綺麗な星が空に点々と散りばめられ力強く輝いていた。
久々に見たなー
素直な感想を心で呟く。
最近は近い町や村を選んで旅をしていた為、野宿という選択肢を選ぶ機会など無かった。
なのでいつも見慣れている空がより魅力的だった。
わあっ―!と地面に寝転び仰向けになる。
ひんやりとした地面が心地好い、気付けば身体も寒さに慣れて前ほどの震えもなくなっている、余程長い時間が経っていたのだろう
地平線の向こう側がうっすらと明るくなっていた。
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