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生暖かい何かが頬に触れる。
それを確認するかのようにまだ気だるそうな目蓋を開く。
太陽は既に空高く昇っていて先程のような寒さが嘘のように暖かくなっていた。
「あ、起きた」
すぐ横から聞き覚えのある声がとんでくる。
振り向き思考を整理するまでは然程時間を必要としなかった。
「えーと、君は確か昨日の…」
そして思い出す、その声の主である少女は昨日の客であり、壊れたペンダントを売りつけた客である。
「昨日はすみませんでした、御代を払い忘れてしまって…あっ、コレお詫びです!」
まだ暖かいミルクを彼の手に持たせ少女が懐を探り硬貨を取りだそうとする。
「いやいやいや!いいですよ別に!ミルク頂きましたし代わりに差し上げますソレ!」
寧ろタダでいいですよソレ。
差し出されたミルクを少々口に含む。
「でも…」
少女は首に下げているペンダントを見る、どう見てもミルク一杯と等価では無いような装飾品である。
確かに開きはしないものの、それでも銅貨数十枚くらいはするだろう。
お客様は神様です!と退かない彼に少女も暫く考えて縦に首を振る。
「ありがとうございます、えーと…」
少女が困った表現で彼を見る。す、んと…」
「ありがとうございますウーさん、あっ私はティラミスといいます」
ニコッと微笑む少女。
彼もぎこちなく微笑み返す。
「んー、この辺に御住まいで?」
彼がティラミスに対して質問する。
返ってくる答えは大体予想できる
「違いますよ~?」
…ハズだった。
その返答に目を丸くするウー。
「えーとですね、此処からずーっと西へ行った場所にあるボレンって村です。」
「は、はいーっ?」
予想外の場所につい声をあげてしまう。
(大人でも丸一月くらいかかるじゃないか…なんでまたそんな場所から…)
「だ、誰かと一緒に来たのかな?」
恐る恐る少女に聞いてみる。
一方少女は首を傾げながら「一人だよ」と答える。
よく人拐いに会わなかったと逆に感心してしまった。
「えへへ、実は色々あって村が嫌になっちゃって…」
ウーが何て返そうか迷っているうちに彼女が口を開いた。
表情は笑っているものの、声のトーンはやや下がり気味であった。
少女もそれ以上は黙ってしまった。
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